日本の少子化傾向が止らない。一人の女性が一生に二・〇八人の子供を産まなければ人口を維持できないが、現在一・三四人で、このまま行けば五十年ごとに子供の出生数は半減して、年金・医療・介護などの社会保障制度はパンクしてしまう。
▼フランスでも一九七〇年代に少子化になったが、妊娠・出産に保険適用、育児に税制上の優遇措置などの施策の結果、出生率は二〇〇八年には二・〇八になった。出産・育児・教育など親の費用負担を軽減することは子供を産みやすくする。
将来、税を負担し社会保障を維持してくれる子供たちを育てる親の税負担を軽くすることも必要なことだ。
▼しかし、フランスでは一九七〇年代に新生児のうち六%だった婚外子つまり結婚しないで産まれた子供の割合が、二〇〇八年には五十二%になったという事実もある(日本は二%)。
確かに出生率は増えたが、伝統的な結婚は半分以下になり民法から婚外子という言葉はなくなったという。結婚に対する考え方が変わってしまったのか、女性が一人でも育てられる制度が婚外子を増やしたのか、どちらが先かよく分からないが、少なくとも制度によって助長されたということはあるだろう。
▼伝統的な家族制度が崩壊した後に、どのような共同体ができるのだろう。経済成長の果実として社会保障は家族を補完する形で充実された。私たちも大いに恩恵を受けているのだが、今の豊かな社会がいつまで続くかは分からない。
もし社会に大きな変動があったとき、まず頼りになるのは伝統的な家族を基盤とする共同体ではないだろうか。
▼また、少子化が進むと、今の社会保障制度を維持できなくなるが、制度維持のために制度で補強していけば制度の肥大化が進んでしまう。ということは国民の負担が重くなるということである。
最近は小さな政府論は不人気だが、受益と負担の関係も明確にした方が良い。
▼それにしても、道端で遊ぶ子供たちが皆に可愛がられ大切にされていた日本はどこにいったのだろう。
(以上、地元新聞「子供・躾け・教育」に寄稿したものです)