ドイツ人と話す機会があったので「ドイツには兵役があって、軍に行きたくない人は福祉施設などを選択できると聞いたがそうか?」と質問したら、意外な答えが返ってきた。「ドイツの徴兵制度ではA・B・C合格に選別される。A合格者で軍隊以外に行くことはほとんどない。自分もA合格だったが、祖父たちから『それは名誉なことだ。軍に行けば、体も強くなるし、頭も良くなる。ぜひ行け』と入隊を勧められた」と言っていた。同じ敗戦国でありながら、軍に対する態度にどうしてこれだけの差があるのだろうか。
▼ドイツ人と結婚しているクライン孝子さんは、その兵役制度について次のように書いている。「ドイツ連邦議会では、ときどき兵役義務の是非を巡って活発な討論が展開されるが、最終的にはいつも存続論が大勢を占めてしまう。理由はドイツ国民の多くがこの兵役制度を支持しているからだ。そもそもドイツにおける兵役とは『共同体における国防意識を通して、規律と責務、論理的かつ戦略思考、肉体および精神力の鍛錬』にあり、ドイツにとって兵役とは『将来、国を担う若者に対する貴重な人材育成および訓練であり、それゆえ重要な国家行事の一つ』と捉えられているからだ」
▼兵役体験を持つクラインさんの息子についても「炎天下での長距離行進訓練では二十キロのリュックを背負い、途中仲間が倒れると、互いに励まし助け合って目的地に到達するなど、『カメラード』と呼ばれる強い仲間意識を体験している。兵役義務終了後、息子は心身共に見違えるほど強健な青年に成長していた」と書いている。
▼韓国青年の兵役体験記にも、自分勝手な奴もソウル大学院生もチンピラも、厳しい訓練を通して規律と連帯感が養われると書いてあった。韓国軍では、銃も加えると三十三キロの完全装備を背負い、寝ずに二十八時間で百キロ走破の行軍訓練をするという。
▼ある調査で、各国の青年に有事になったら戦うかを調査したら「戦う」と答えたトップは九十五%のベトナム、次に九〇%の中国、ドイツ三十%、日本は最下位の十五%であった。しかし、各国のように愛国教育も兵役もない日本で、「戦う」と答えた若者が一五%もいることは実は頼もしいことかもしれない。
(以上は、「地元新聞」日田・甘木版に寄稿したものです)
日田版は昨日の日曜日に配布されていましたが、やしきたかじんの「そこまで言って委員会」のなかでも、徴兵制度が取り上げられていました。